1997年7月18日
京都新聞 1999年7月18日「私の京都新聞 評」掲載記事
日本サスティナブル・コミュニティ・センター
事務局長 浅野令子
子供の心は、おとなのミラーサイト。中国、米国、韓国、日本の中学・高校生の21世紀に関する意識調査によると、日本の中高生の人生目標は、「その日その日を楽しく暮らす」で、希望の職業は公務員、「将来に夢や希望を持っている」も4ヶ国の中で最低― という結果が出た(5月14日朝刊)。
未来への確信の揺らぎからくる閉塞感や不安が、リストラや倒産のニュースで増幅する中、世界各地の21世紀への取り組みが週1回の
『21世紀へ 地球みらい』 シリーズ紙面で紹介されており、興味深い。
さて、例えば、外国の新聞社から「京都の21世紀ビジョン」というようなテーマについて情報提供や取材協力を要請されたら、京都新聞はどう対応するのだろう。提供し得る情報の選択や担当する記者の選任を行い、透明度の高い京都発の情報として発信していくのであろうか。もしくは、一新聞社の責任では対処しきれない部分があると判断、京都市や府に話を持っていく。市・府側は、行政として策定し公表した計画・事業以上の情報はない、と新聞側に差し戻す。結局、紆余曲折を経て、学識経験者なる方の個人的見解を求めて一件落着…?
今や、情報の選択やカバーする範囲を限定するのは難しい、いわゆる「ボーダレス」と呼ばれる時代である。アカウンタビリティーの問題を含めて、新聞社の姿勢や記者の力量が問われるところである。地球に根ざした新聞として、より一層のしなやかな対応力を期待したい。
『NIE・教育』のページの「こどもニュース」欄は、私の重要な情報源。「情報公開法」施行に関するおとな向けの記事の多い中、こどもニュースで「情報公開」を取り上げたのはタイムリーであった(4月29日)。
情報公開制度は200年以上も前にスウェーデンでつくられ、1967年にアメリカが「知る権利」に基づき「情報公開制度」を実施、日本ではやっとその制度が施行されるようになったという。この問題は私たちの社会に大きく影響するだけに、国の成り立ちを理解する上で、シリーズにして詳しく紹介してもらいたかった。アメリカでは税金によってつくられたすべての行政資料は、インターネット上で公開するよう法制化されており、巨額の研究開発費が捻出できない中小企業でも、公開されたデータベースを利用し、商品開発が行える。
情報公開は国の不正を暴くよりも、産業振興にとって大切なライフラインであることを銘記してほしい。国は不正をするので情報公開が大切なのだ、とだけ聞かされては、夢は小さくしぼみ、子どもだけにはとどまらず、楽しく暮らす享楽志向に走りたくもなろうというもの。夢はふくよかに、上を向いてあるこう!といいたいのである。