京都新聞 1999年4月18日「私の京都新聞 評」掲載記事
日本サスティナブル・コミュニティ・センター
事務局長 浅野令子
外は雨、外出がおっくうな日曜日。タイムスリップして22世紀まで行ってみようか。24時間アクセス可能な情報スクリーンのスイッチを入れ、旅行の項目を出してみる。スクリーンに映し出される20世紀の遺跡ツアーとはどんなものだろうか。原子力発電所や大量投棄された車の残骸だろうか。はたまた、油田の採掘跡。21世紀の足音が聞こえる。新世紀を私たちはどのように作りだしていくのか。21世紀の遺跡として私たちは何を残すのだろうか。
京都府は21世紀初頭の府政の基本指針となる「新しい総合計画」素案を府総合開発審議会に示した(4月7日朝刊一面)。それによると府が目指す将来像は、持続的発展が可能な循環型社会、「ひと」を大切にする「健康・福祉社会」、新しい時代に対応した活力ある地域経済、京都の文化を活かし世界と交流する社会、快適でゆとりある社会を理念の中心に挙げているという。
統一地方選の幕が切って落とされてから、各党の選挙運動の模様が、京都新聞にも朝刊一面の『最前線を行く』のようなシリーズとして掲載されている。また、4月3日朝刊社会対向面では「はや全開 過熱気味」と、激戦の伏見区の様子を伝えている。’99統一地方選挙での女性候補の活動を紹介する記事もある(4日朝刊3面)。しかし、政党の議席獲得への意欲や運動の様子については分かるが、20世紀から21世紀にバトンタッチをする大切な時期に、目先の票獲得作戦ではなく、前述の「新しい総合計画」素案のような、立候補者のグランドビジョンが分かるような記事が見当たらない。紙面の関係で細かく載せられないのであれば、どこで各候補者の情報が的確に得られるのか記載してくれると、細切れの街頭演説や断片的な情報のジグゾーパズルがひとつの絵にできるのだが。候補者へのアンケートを載せるのも良し。『けいざいWIDE』や『科学』、『環境』面のように、ひとつのテーマでまとめて、将来、有権者となる子どもも含めて分かるような、選挙に関する特別紙面を設けてはどうだろうか。立候補者の数や各党の議席獲得の行方を刻々追うのも良いが、選挙中じっくりと、国や地域をつくる上で大切な「選挙」の意味や議会の仕組み、そして各党や立候補者のビジョンが分かる紙面がほしい。
日本サスティナブル・コミュニティ・センター(www.sccj.com)は、持続可能な循環自律型社会の構築をキーワードに活動を開始した。21世紀へ移行する社会を、どのように京都新聞が映し出していくのか、これから6ケ月間追っていきたい。
あさの・れいこさん
日本サスティナブル・コミュニティ・センター事務局長。1957年大津市生まれ。関西大文学部、シアトル大社会学部卒。シアトル大大学院で「非営利団体経営修士号」取得。97年に米から帰国。99年1月から現職。大津市在住。