報告 2004年4月24日『次の生き方 エコから始まる仕事と暮らし』

掲載日時 2004-4-24 12:24:00 | トピック: レポート

2004年4月24日 エコミュニティ研究会レポート
「次の生き方 エコから始まる仕事と暮らし」
講師: 森 孝之氏

はじめに
私の馴染める空間は、2つとして同じものがない曲線と曲面から成り立つ自然だと大学に入ってから気づいた。それが終生の私の一つのテーマになった。
卒業後は伊藤忠商事に入り、繊維部門の取扱商品を原料から製品に転換するように提案し、総合商社の中では最初にそれを会社の方針にしてもらえた。私は、ファッションをシステムとして捉えたくて、入社8年目にソフトウエアー子会社「伊藤忠ファッションシステム」を作らせてもらった。人々を幸せにするために誠心誠意尽くしたが、それは人々の欲望をどのように解放するか、そのコツを追及していた恐れがある。
                                             
 欲望の解放から、人間の解放へ
ウィークデーは、白亜の殿堂のようなところでファッションの仕事にたずさわる傍ら、私にはもうひとつの生活があった。土日は爪を屎尿や生ごみで真っ黒にする生活である。その二つを行き来しながら、「物差し」を変えなければいけない時代に差しかかっていることに気づかされた。欲望の解放ではなく、人間を解放する時代への移行である。
ここ50年の間に、私たちは家屋を消費の場に変えていた。工場で作られたものを選り好みして買い、消費するだけの場にしていた。それが環境破壊や家庭崩壊などの原因だと睨むに至り、商社を17年足らずで辞めた。その後ワールドに入ったが、衣服は金儲けの手段にとどまり、バブルで株や土地に手を出し始めた。不安を覚えて、8年で辞めた。

「企業へのエール」、本を出版
 『ビブギオール・カラー−−ポスト消費社会の旗手たち』(朝日新聞社1988)の出版に専念した。人類は狩猟採集の後に第2の時代・農業文明に移行しながら崩壊させた。同様に、工業文明の破綻も近い。ホワイトカラーやブルーカラーを台頭させた工業文明と決別し、ビブギオールカラーになって第4時代の旗手を目指そう、と呼びかけた。単色のスペシャリストから環境問題にも配慮する多彩なゼネラリストへの転換を勧めたものである。

続いて1990年に講談社から 、自分達には厳しいが、その厳しさが社員の誇りとなり経営者の自信に結び付ける『人と地球に優しい企業』が求められている、と呼びかけた。環境に配慮しない企業は早晩破綻し、環境への配慮が収益の源泉になる、と訴えた日本で最初の本になった。
1992年に『ブランドを創る』(講談社)を出した。これからは土地や工場を資産としてあてにしてはいけない。信用という形のないものをいかにブランドに化体(形あるものに)するかが問われている。逆を行けば、ブランドは不買運動のシンボルになる、と訴えた。
要は、消費者が何を求め、いかに誘うかが仮題だが、その目指すべき方向を明らかにしたくて、1994年に『このままでいいんですか もうひとつの生き方を求めて』(平凡社)を出した。この4冊で、資源小国の企業と消費者が繁栄する方向を示そうとした(江戸時代という閉鎖空間で持続性のある生き方を余儀なくされながら文化的に繁栄した日本を賛美している)。日本の企業にエールをおくったのだが、あまり省みられなかった。

最小の消費で、最大の豊かさを得る生き方を
1998年に、日本経済新聞社から『「想い」を売る会社〜こんなモノづくりが消費者を動かす〜』を出した。先の4冊を仮説とすれば、すでに世界には、モノの良し悪しではなく企業の良し悪しを競って成功する事例が誕生している、との検証編である。
そしてこのたび、私からすればシリーズの完結編ともいうべき、『次の生き方 〜エコから始まる仕事と暮らし〜』を出した。これまでは所得や消費の増大によって豊かさや幸せを得ようとして自然を疎外してきたが、それが環境破壊や南北問題などに結び付けていた。これからは「最小の消費で、最大の豊かさや幸せ」を求め、私たちが豊かになるに従って空気や水がきれいになりテロがなくなる方向を目指すべきだ。そこに真のビジネスチャンスもある。文明への憧憬から文化の尊重に意識を切り替え、家屋は生産の場に戻すのではなく、創造の場にまで高めるべきだ。

この中で、これまでの私たちの生き方や企業活動のあり方が地球環境を破綻させつつあり、近く深刻な事態を生じさせる、と喚起した。農地は増えず、反収は下がっている。農地の75%は砂漠化の兆候が出ているのに、人口は増え続けている。このままでは20年以内に食糧問題による破綻が顕在化する。次のもっと豊かな生き方に切り換えよう。

質疑応答
○質問 土地がない人はそんなに豊かになれるのだろうかと思うが、どうなのだろうか。

○ 森 土地は(必要条件ではないが)、日本では廃村が増え続けており、うなるほどある。しかも、これからは地価が下がり、自分が土地の値打ちを上げても、税金は増えず、安心して土地を愛しめる。時間がなくても管理ができる庭作りをすればよい。問題は資金をどう配分するかにある。『次の生き方』では、広い土地を手に入れる秘訣として3分割法を紹介している。


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