■報告 2002年3月10日エコミュニティ研究会「e社会を考える」
掲載日時 2002-3-10 17:11:00 | トピック: レポート
| ■ テーマ e社会を考える 講師 辻 正次(大阪大学大学院国際公共政策研究科長 KANSAI@CANフォーラム主査) 岡部寿男(京都大学大学院情報学研究科知能情報学専攻 助教授)
辻 正次「情報と公共性、情報の経済学」 ビジネスの世界では、情報の有無はすぐに利益に影響する。しかし、基本的に情報を得るには非常にコストがかかる。コストをどう節約して効率的に情報を得ていくか、これが情報経済学の発想だ。
情報の重要性は、取引が始まった時に相手をどれだけ信用できるか、ビジネスの提携をして良いのかを判断できるところにある。昔から日本では、口コミや経験によって情報を蓄積していた。ゆえにコストをかけずに必要な情報を得たり、情報がなくても安心して取引ができる社会の仕組みがあった。ところが今、日本の社会制度、商慣行、商取引などは揺れてきている。 70〜80年代の日本の成功は、日本が要らないお金をかけないで、その分、国際競争で勝つ図式だった。ところが今、情報を入手する手段が非常に増えてきた。逆に欧米の企業はコストを安くして、良い情報を取り入れるようになってきている。これが90年代の日本の、情報化による経済の弱点だ。
情報化が進むと、経済はますますネットワーク化する。情報を通じて今まで全然知らなかった人と結びつき、自分が持っていないものを入手したり、自分の能力や知識を高めたりできる。経済や社会に対する情報化の貢献である。 ところで、私は専門の傍ら地域情報化をずっと調べている。進んでいたり、遅れていたり、様々な進み具合がある。 地域の情報化に必要なのは首長の見識、それを支える人材、そして住民の支持だ。更に情報担当者には、自分の自治体をどのようにしたいかの考えと、そのための技術が必要だ。つまり、資金をいかに取ってくるかではなく、「人」が決め手である。
岡部寿男 「e社会を創る 京都の場合 ―みあこネットプロジェクト(Mobile Internet Access in KyotO)」 モバイルブロードバンドサービスとは、いつでも、どこでも、だれでも、使い易い安全な環境を提供することだ。そのために、モビリティ(移動)、セキュリティ(安全)、低コストが求められる。
モビリティはカバーエリアを充実させること。移動透過性、位置透過性があることだ。 セキュリティでは、社会的な必要性、事業者の観点、ユーザーの観点の3つがある。一番大事なのは社会的な必要性だ。無料で不特定多数に無線LANの設定をするのは、閉じた空間であれば良いが、公衆の空間ですると非常に危険だ。 今年の5月から『プロバイダ責任法』が施行される。プロバイダが関係する法律なので関係ないと思いがちだが、実は大いに関係がある。例えば、自分のウエブサーバーに掲示板を置き、誰かがある人の非難や中傷を書いた時、様々な条件により損害賠償の責任を負うこともある。モバイルブロードバンドでも同じだ。みあこネットプロジェクトも民事上の損害賠償を負うことがありうる。
事業者の観点からすると、利用料金を払っていない人はサービスを受けられないようにしておかないと事業は成立しない。だが、無線はユーザー認証もわりと簡単にできてしまう。ユーザーに来てもらって認証し、アカウントを配ることが必要だ。 ユーザーの観点からすると、偽基地局に接続させられないための仕掛けが必須である。ユーザーを認証するときに交換する鍵がユーザー毎になっていること、送られるパケット毎に認証すること、当然暗号化されていることが必要である。更に、モバイルインターネットは本物のインターネットでないといけない。そのためには固定のIPアドレスが必要である。
ところで、モバイルブロードバンドは、ブロードバンドでないといけないが、ブロードバンドはベストエフォートで品質保証はない。この場合の課金は定額制しかありえない。 最後に『みあこネットプロジェクト』を来年以降も続けていくのはかなり難しい。様々なコストをどうするのか。特にユーザー管理コストをいかに低くするかは一番難しいところだ。事業化しないなら、それなりに1年間のお祭りにすれば良い。しかし事業化するなら、きちんとどういう組織でするのか、お祭り気分で1年間遊んでいる間にも、これは是非真剣に考えないといけない。
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