『地域情報化と地域アイデンティティ −受信者の属性と利用メディアの地域比較−』
日時:2004年3月23日(火曜日)
講師:藤本昌代氏(同志社大学文学部社会学科 専任講師)
□ はじめに
1999年、2000年に行なった、地方自治体と地方議員、有権者というそれぞれの立場から見た自分たちの地域に対する思いや中央との関係のデータを用い、地域の情報化についてまとめた報告書の一部をご紹介させていただく。
□ 情報リテラシーの格差
平成10年度の通信白書には、地域情報、特に電子ネットワークとかIT化が進めば、地域の情報はいろいろな人に共有されると書いてあった。その当時の情報リテラシーは情報機器の操作能力を指していることが多かった。
また、通信白書に掲載されているソフトに関する行政サービスの充実度を見ると、近畿地方は非常にサービスの充実度が高いと言える。
ここでは情報を取得する人々を類型化し、以下の4つのタイプに分けている。いわゆるエンターテイメントの情報を取ること以外はまったく関心を示さない娯楽型。時代の先端的なファッションや流行の音楽を楽しむことには関心があるけれども、社会情報には関心が薄い私生活情報型。年金などの生活に役立つ情報に関心を示す生活情報型。政治経済、外国と日本の関係とか、多様な世界情報を欲す社会志向型である。この中で、地域の行政に関心をもつ層は生活情報型と社会志向型であり、地域情報を取得する人たちは地域アイデンティティに関わる項目の相関が非常に高いというデータがある。
□ 受信者と発信者のチャネルの齟齬
パソコンができる人は近所に聞かずに、インターネットを用いて自分ひとりで情報を収集するので、結局、地域情報化が進むことによって、人に関わらずに情報を得ることになるのではないかとジレンマを感じている。
結論として、地域情報化政策の進度と地域アイデンティティの項目との相関性はなかった。地域アイデンティティを構成している要素は多元的であるため地域情報化政策が地域アイデンティティを高める効果があるとは言えない状況である。しかしながら、地域情報を取得しようとする人は地域アイデンティティ項目と相関があった。
(質疑応答)
○質問 ライフスタイルは行政区とそもそも一致しないので、むしろ沿線別にやっていかないと有意な結果は得られないと思うが、どうだろうか。
○藤本 マーケティングという意味では、エリア別であれば有意な結果が得られると思う。しかし、この調査は政策による地域の情報化が地域アイデンティティにどのような効果をもたらすかを見ようとしたものであり、商業ベースのエリアを対象にしたものではない。この報告のテーマは、チャネルと受信者の齟齬を常に見ていかないといけないのではないかということを理解してほしい。
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