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レポート : 報告 2001年3月20日 コミュニティのファイナンス
掲載日時: 2001-3-20 15:26:00 (107542 アクセス)

2001年3月20日エコミュニティ研究会 概要報告書

コミュニティのファイナンス

今回のテーマは、コミュニティのファイナンス。大阪大学公共政策研究科の跡田教授には、コミュニティの実情とコミュニティ活性化のための「金」に関するを話を、圓城幸男氏(ホテル日航プリンセス京都取締役副社長)には、室町コミュニティ事情を語ってもらい、コミュニティのファイナンスの現状を参加者と話し合った。

 ■自治会・コミュニティ・お金 ・・・跡田
自治会は現在もあるが、ただほとんど形をなさないぐらいまで崩壊している地域と、ものすごくしっかりとしたものが残っている地域とにはっきり分かれる。
名古屋には形だけの町内会、自治会があり、今や自治会はほとんど残っていない。高山では春と秋にお祭りが行なわれ、自治会なり町内会の人が、お金も人も出したりする。そのような2つのことから考察すると、自治会的なものが残っているところは、いわゆる、今流行りのNPOのようなものはほとんど育っていない。それに対して、大規模な住宅開発をしたような新住民のいるところでは自治会組織がほとんど機能せず、逆に、ボランティア活動とかNPOが発達している。
ところで、自治会というものが、はたして今でいうNPOといえるのかどうか?
戦前では、おそらくボランタリーな組織に近かったのではないだろうか。それが戦時体制の中で崩されていって、最近の状況をみると、市町村の意思伝達機関となっている。しかも市町村からそこにお金が流れ、それで維持させているところも多々ある。農村の一部の地域を除いては、現在の自治会を、ボランタリー組織と位置付けるのは難しい気がする。
 また、都市部などでは、自治会的なものが昭和30年代から40年代に完全に崩壊し、今新たな動きとして、コミュニティを再生しようという動きが起こってきている。単位としては1万人規模で、小学校区というような形のものが、1つの一番小さな単位でのコミュニティと考えているようである。言いかえれば、そのくらいの規模であれば、お金がちょうどうまく動く単位になっているということである。
 また、コミュニティ・ビジネスという話もでてきている。ニーズに応じて自分たちで事業化し、自分たちの地域の人に還元していくもので、そういう単位としても、コミュニティというのが1万人規模が適切と考えられている。
 コミュニティ再生の問題として、お金の問題がある。ボランタリーにお金を集めている限りは、なかなか集まってこないのではないか。例えば、コミュニティの意思を集約するようなNPOをひとつ立ち上げ、政府ないしは自治体からお金、補助金を自分たちで受け取ることが必要になってくるだろう。そして、自分たちでビジネスを展開して稼ぐという形で、コミュニティの人たちにサービスを還元していく形も必要ではないだろうか。また、収入源として、寄付も考えられる。寄付は、今の日本の社会ではそれほど期待ができないが、自分たちの町のためになるということにつながっているように見えると、寄付も可能であろう。日本人はちゃんと税金を払っているし、そのような意味でも自分の意思が反映できる、そして自分のやって欲しいサービスを提供してくれるところに対価を支払う、という形態がかなりの規模で拡がっていくのではないかと思う。また、そのことにより、住民の意識を変え、コミュニティーを維持し、コミュニティー活動をする人たちを育てていくのではないだろうか。

■着物業界に未来はあるか 圓城
 学校を卒業し、呉服商社に入社、営業担当となり、経費のかけかたや販売方法に、「なんか原始的な商売だなあ」と感じていた。着物に対する偏見はその頃からあったのかもしれない。
1980年、会社もいろいろ考えた末、海外事業を展開することとなり、サンフランシスコに現地法人を作るということで、私はアメリカに住むことになった。アメリカに住み、「非常にこの国はすごいな」と思ったことがたくさんある。アパートを借りるにしても、電話をつなぐにしても、日本とは文化が全く異なっていた。また、サンフランシスコの事務所を起点に、いろいろなところへセールスに行くのだが、ここでも日本とアメリカのビジネスの違いを感じた。どんな大手の企業のバイヤーでも絶対会ってくれる。疑問に思って尋ねると、「バイヤーというのは、新しい商品を見つけるのが仕事で、もし隣の会社でその商品がものすごく売れたら、私はあなたに会わなかったことを理由に退社させられる」と言われ、ビジネスの認識の違いを思い知らされた。
ただ、そこで、着物という商品を見せた時に、「ワンダフル!ビューティフル!」と褒めてくれるが、値段を言うと全く相手にされなかった。そこで、路線変更をし、古着に焦点を絞ったところ、着物という感覚より、むしろデザインとして興味をもたれ、結構売れたのである。
 1980年には着物以外の事業と並行し、毛皮やレザーを始めた。1988年には、香港にレザーの縫製工場を作ることになった。たまたまわが社から発注していた工場経営者が、中国への密輸で逮捕されたことがきっかけで、ビジネスがあるのにお金が動かない状況を変えるべく、法人を設立して作ることとなったのである。
 そして1990年にはホテル事業の計画が持ち上がり、94年に開業。ところが時間がなく、現地に任せっきりになり、これでは再投資をかけるのにリスキーだということで、香港の中国返還と同時に、やめることになった。
 私は呉服屋と言いながら、着物中心ではなく、それ以外のことを中心にやってきたのである。とはいえ、着物会社の中でやっているので、営業的には展示会や販売会でいろいろな所へ結構行き、それなりに着物には触れてきたのではあるが、その中で「着物はどうなのか」と考えるようになったというのは、やはり、アメリカへ行ったことがひとつのきっかけとなったのではと考えている。
日本ではマーケットが小さくなっていて、海外のいろいろな業種と比較した時に、何かおかしいなと常に疑問に思っていた。そして、やはり世界に通用しない商品だったということが非常に大きなショックだった。それに、着物そのものの位置付けが、衣類か、民族衣装か、美術品か、あいまいな商品だと今でも思っている。それを考えると、着物の将来性に失望する。また、一人で着られないというのが、最大の欠陥ではないかと思う。また、着物は買う時代から借りる時代になったのではないかとも思う。
昔、着物がやっていけたのは、需要があったことと、加工が分業され、家業として着物をやっていたところが非常に多かったからだと思う。それだけいろいろな人の手を経ていくので、厳しい不況があっても、うまいこと皆でリスクを分散しあって乗り越えてきたというのが着物業界だったのである。それが今や家業から企業になってしまった。
小売店の販売の方法に問題があって、お客とのお付き合いが古いので、“ある時払いの催促なし”のような売り方をし、結局、経営を圧迫してきたのである。
本題の『室町に未来はあるか』だが、家業として一度商売の原点に立ち返ってやっていけば、着物が世の中から消えてなくなるようなことはないのだから、未来がなくもないが、今の規模でやっていくと未来はもうないのではないかと感じる。当然これだけ生活様式が変わっているのだから、日常に着るものとして、生き残るのは不可能である。ただ、生活にゆとりがあって、俗世間の空気と離れたところでちょっと着物を着るというのは、それはそれなりに趣があっていいかなと思う。しかし、着物というのは、どんどん若い人たちの心から離れていっているというふうに思われるのである。

■坂口
アジアへ行けば、韓国のチョゴリ、タイ、ベトナムのアオザイという民族衣装等を身にまとった人たちが町を歩いていて、アジア人の心は民族衣装にあると感じる。気候もあるが、日本、特に京都はやはり着物の似合う町ではと思うのである。

■日本に未来はあるのか・・・跡田
着物業界に未来はあるかという前に、日本に未来はあるのかということだと考えている。あらゆる産業がいい時もあれば悪い時もあろう。しかし、特別な技術のあるもの、美術品や伝統工芸品などは残せる。おそらく着物は伝統工芸品に入っているし、その中で、マーケットの中に活かしていかなければならない気がする。

■ 質疑応答
(参加者)NPOは、産業として成り立たせないものを成り立たせる手段というようにおっしゃったが、どういうことなのか。
(跡田)誰かが儲かったお金を、寄付という形でもらう。そのお金で、採算をプラスマイナスゼロくらいになるような活動をする。もうひとつは、更に自分のところの他部門で儲ける。そして成り立たないことを成り立たせるのである。トータルで考えれば、プラスマイナスゼロとしてできるようになって可能性がでてくる。
(北波)自治会の会長をやっているが行政からの補助は得ていないが…。
(跡田)はい、出ているところと出ていないところはある。
(北波)活動に対して市から補助が出るが、個人に対する補助というのは全くなく、運動会、秋祭り、敬老会も自発的にその組織内にあり、自発性ある自治会活動となっている。
(木)2つ質問したい。1つはアメリカのように市民税を安くすることによる新しい市場について、2つめは、社会経済メカニズムが変わってきていることについて少し説明してほしい。
(跡田)税金を減らすことは、政府のサービスを減らすことだから、それによって困る人が出てくる。そこをうまくいかせるために、NPOがますますこれから重要視されるだろう。2つめの質問だが、インターネットという形で、不特定多数の人が情報を見るようになるとマーケットは拡がるし、生産者と消費者を直接結び付けてくれる。ある程度のディマンドを発掘できる可能性もでてくるであろう。着物業界でも試してみる段階なのではないだろうか。
(北波)着物は、着方、価格、売り方、生活環境をうまくマッチングさせていくと、日本の歴史の息吹が残った衣装として、状況が整備されれば、捨てたものではないのではなかろうか。

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