サイトマップ サイトポリシー
NPO法人日本サスティナブル・コミュニティ・センター
メインメニュー
カレンダー
前月2024年 6月翌月
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
ニュース ニュース  
予定 予定  
ログイン
ユーザ名:

パスワード:


パスワード紛失

新規登録
レポート : 報告 2001年5月18日 オンラインコミュニティでのファイナンス 「互恵、互酬」の投げ銭システムを考える
掲載日時: 2001-5-18 16:10:00 (98320 アクセス)

2001年5月18日エコミュニティ研究会 一般HP用

■投げ銭システム

講師:松本功。ひつじ書房という小さい出版社を経営している。
著者がいて、読者がいて、その間に出版社・編集者がいるわけで、その立場から投げ銭システムを考えてみた。ひとつの曲がり角にきているので、その辺りを復習する形で進めさせていただく。

どうして投げ銭なのか。かっこつけて言うと、「市民のパトロンシップを作ろう」「情報を評価して、いい物であれば支援し、持続できるようにしよう」「よい情報に対価を」ということである。
対価と言うと、同じ価値の物を交換するみたいになってしまうけれど、そうではなく何らかのお返しができるような仕組みで小さい組織、個人、あるいは市民主体の経済があればいいと思っている。
私自身、出版社として苦悩している。例えば、値段が高い本はコピーした方が安いということでなかなか売れない。つまり、作り手側や著者側に評価が伝わってこない。
そして、情報を作る過程というものに対して心を及ばさなくてもいいのだろうかということを考えた。
小額決済の仕組みに関して、クレジットカード決済になぜ小さい企業が参加できないのだろうかということを何度も聞いてきたが、もともとそういう問題設定があること自体、よく分かっていない気配がある。
以前から日本の中世の芸能に興味があった私は、パッケージ化されていないコンテンツの時代に、大道芸という形で芸能者にお金が舞う仕組みがあったことを思い出した。そして、インターネット上でも同じような仕組みが使えないだろうかと考えた。
投げ銭という言葉のほかに、昔、「今日は木戸を10人分積んで」と言って、一人で10人分を払う木戸銭があった。結果的に劇場や芸人などに出す支援になり、特定の個人にするご祝儀とは少し違った意味合いである。
芸能史の話になるが、辻で講釈をする人、琵琶法師、太平記読みなどがいた。多くの人が本を気軽に持てなかった時代、テキストを持ち運んでいた(学問や思想を伝えていた)のは、もしかしたらこの芸人たちだったかもしれない。学問も辻で講釈をしていたし、米沢藩が辻でいい官学者を見つけて採用していたという話もあるそうだ。
琵琶法師にも色々とパターンがあり、新築の家にお祝いに行ったり、また、宵待ち講(一晩寝ないで先祖の菩提を弔う)をしたりしてお金をもらっていたそうである。
そんな風に、もともとは芸人を活かす仕組み、享受する仕組みがあったわけだ。
デジクリ(デジタルクリエーターズ)で投げ銭システムについて投稿させてもらったら、最初に10人くらいの人が賛同のメールを送ってくれて、賛同人を集めて推進準備委員会を結成した。
1999年6月に飯田橋のシニアワークで第1回シンポジウムを行なった。「市民側でやった電子決済の初めてのシンポジウムではないか」と日経の記者の人が言ってくれた。
同年9月に同じ飯田橋シニアワークで第2回目を開いた。その時はもう少し焦点を絞り、図書館が個々の投げ銭の代わりにテキスト発信者に対して支援する仕組みを汲み取れるかどうかのシステムについてのシンポジウムとした。
実際にどういう決済手段をやってきたかと言うと、まず初めにサン電子(名古屋)が1999年末から2000年6月の半年間、クレジット代行の決済の仕組みを使って投げ銭を実施した。
それから、電子財布の一種のミリセントという仕組み(もともとはDELLの人が考えたらしい)を、CompaqとKDDが商用化して2000年3月からやり始めた。ただ、ソフトが重いなどという問題点もあって不評らしく、2001年8月に中止してしまうそうである。
あとは、ViVa!ボランティアネットが、Biglobeの決済の仕組みを使用する形で2000年7月からやり始めた。Biglobeの会員でなくても「るんるんコース」というBiglobeの決済だけ代行するという仕組みに登録すればできる。
また、日本自然保護協会などいくつかのボランティア団体が、2001年1月から投げ銭の実験を開始した。Biglobeは決済の手数料を10パーセント取っている。通常のクレジットカード決済がだいたい7パーセントで、事務局の経費を考えると10パーセントは取らざるを得ないが、「10パーセントも取るのか」と思う人も多いのは事実である。
他にはWispという三菱商事系のものがあり、これはプロバイダー決済とクレジットカード決済代行を混ぜたもので2001年2月より開始された。簡単に言うと、アクセスしたプロバイダーと契約している人はプロバイダーが決済し、契約できていないところに関してはクレジットカード決済にするといった形である。
その他にもいくつか決済の仕組みはある。BitCashというプリペイドカード方式は、安全性に関しては非常によくできているが、購入する手間と暗証番号をたくさん入れないといけないことなどが面倒かも知れない。
携帯からお金を払うという方法もあるが、公認されるかどうかが問題である。
小額決済の急展開ということで、E-BANKやソニー銀行などのオンライン上の銀行が出てきた。E-BANKは、2001年夏からメールでお金をつけて送れる仕組みをやる。
それから、アマゾンがHONOR SYSTEMを開始した。これは全ての決済手段に共通の問題点であった、一回目の決済のわずらわしさをクリアした非常に見事な形である。
以上のように、新しいことがどんどん出てきている反面、事業者の撤退も相次いでいる。ミリセントの撤退の他にも、インターネットクレジット決済を先行的にやっていたアコシスというところが2002年3月に中止する。
投げ銭は賛同のメールも多いが、「できたら導入したい」という話がもっとも多い。でも、できていないから活動しているわけである。したがって、投げ銭のシステムをどう作っていくかというのが問題である。
投げ銭の困難と可能性という点を考えると、大げさに言うと近代史はパトロンシップを失っていくような歴史であった。例えば、お祭りに行っても見世物系はどんどん壊滅していて、残っているのは食べ物系である。お金を払って見る芸というのがどんどんなくなっている。
テレビは、視聴者にとって非常に楽しい無料のコンテンツである。もしかしたらインターネットはテレビなのだろうか。
明治以降の近代を逆回しにして方向転換をし、昔でいうパトロンシップを作り直すこと。すぐにはできないだろうがあきらめないことと、何か起きたときに動けるようにしておこうというのが私の考えである。
私がやるべきことは、新しいインターネット決済銀行との連携と、投げ銭と公共性を考えて議論を進めておくこと、理論武装をすることである。それから、もう少し大きな額から始めるということ。1万円や5千円のコンテンツなどのほうが少しボリュームがあって決済しやすいと思う。
道路交通法の改正で大道芸人も芸を提供しにくくなった。大道芸人の人たちと一緒に芸をしてお互いのためのデモンストレーションをやるとか、インターネットで決済ができるようなお祭りをやるとか、芸能大会とか、そういうことを楽しみながらやって状況を打開していくことができれば面白いと思う。

〜フリーディスカッションより〜
○投げ銭の問題点は隣の人が見えないということ。誰かがお金を払った時に、その人がいくら出したか比較して払いたいのが人情だと思うので、それをバーチャルに表現することができるかどうかがポイントだと思う。たとえば、即時的なプログラムを作って反映させるとか、動的ブラウザーみたいなものを作る。

○評価の押し付けではないが、500円払った人が10人で100円の人が2人、とかいうように他の人の動向が見えたらいいかもしれない。

○お金を円やドルで回すのか、あるいは新たな第三の貨幣にするのかというと、やはり円ドルの方が最初は回しやすいと思う。(投げ銭のような電子決済と地域通貨の合体の可能性はまだ低いかも?)

○南蛮貿易の時に投資することを「投げ銀」と言った。ちゃんと行って帰ってくればすごく儲かるが、沈没してしまう可能性も強い。投げ銀はまさに“投げる資”だった(パトロンシップ的要素が強い)わけで、「投げ銭」とは少し意味が違う(?)。

○投げ銭は、決済の仕組みが面白いからではなく、ある意味で将来に残したいという気持ちでやるものだと思う。明日なくなるようなホームページに投げ銭はしないだろう。

○(投げ銭の仕組みは)フリーオープンソフト系のソフトハウスをサポートする人がいないので無くなってしまうけれども、オープンソースであれば存続するのではないかという話に通じているかも。

○銀行口座などを一切公開していないページに対して、投げ銭をしたいと思った人が、「私はあなたに投げ銭をしたいから口座を教えてくれ」というくらいのアクションをおこして欲しい。(自分で作って待っているのはちょっと気が引ける部分がある)

○銀行の送料が投げ銭の額よりも高かったりするとつらいので、銀行と提携してインターネット媒体を使って払ったり、口座に振り込まれたりというのがいい。

○投げ銭は決済なのか投資なのか。パトロンシップは、投資というよりは関係づくりであって、払ったから終わりというのではなくその後もずっと続いていくものだし、そのためのコストとしてお金を出す。しかし、コンテンツをいただいたことに対して支払うというのは、その場限りの一過性のものである。つまり、ずっと見守っていって本当に成果を求める投資と、すれ違いざまでポッと投げて「頑張れよ」みたいな投資があって、種類が違うからどちらかには決められないと思う。

○(投げ銭は)払う方ももらう方も気軽な感じでないとだめだろう。(開設するのにすごい手間をかけてやると、「さぁどうぞ」という感じがして引いてしまうかも)

司会 皆さん、お話はつきませんので、そろそろこの辺で中締めとします。お時間のある方は、この後の懇親会にご参加ください。松本さん、非常にお忙しい中、有難うございました。

印刷用ページ このニュースを友達に送る
投稿された内容の著作権はコメントの投稿者に帰属します。
copyright (c) SCCJ 2004-2005 All rights reserved.