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レポート : 報告 第5回『京都研究会まちが変わった ユビキタス社会の可能性』 2003年12月5日
掲載日時: 2003-12-5 12:10:00 (78090 アクセス)

■オープニング
「しつらいともてなしのこころ」
笹岡 隆甫氏(未生流笹岡次期家元)
いけ花パフォーマンスともてなしの心を表現するいけ花の解説。

■ご挨拶
「まちが変わった、ユビキタス社会の可能性」
林 敏彦氏(スタンフォード日本センター理事長)
人間の最初の欲求は、自分は何者であるかのメッセージを伝えるコミュニケーションだったのではないか。同時代に生きる喜びを分かち合いたいという根源のニーズに、テクノロジーはどこまで答えていけるのであろうか。

「みあこネットの今、そしてこれから」
高木 治夫氏(SCCJ代表理事/みあこネット事業統括責任者)
23都道府県に300の基地局があるみあこネットは地域に欠かせないインフラとして使っていただくために今後展開していきたい。

■セッション1「みあこネットでならこれができる!生活にとけ込むみあこネット活用事例報告」
●「ユビキタスラジオを活用した学校教育」
新城直氏(神奈川県視覚障害者情報・雇用・福祉ネットワーク「View-Net神奈川」代表、横浜市立盲学校教諭)
視覚障害者は今まで第三者にコンバートしてもらわなければ情報を利用できなかったが、パソコン利用で自分自身が能力をより多く発揮できるようになってきた。ユビキタスラジオはさらにいつでもどこでもを可能にした。ネックは企業の無知と儲からなければやらない姿勢である。
●「電子カルテと公衆無線インターねっと」
北岡 有喜氏(国立京都病院医療情報部長)
医療の情報格差は、ブロードバンド環境の整備により小さくなった。今患者のニーズは情報公開からプライバシーの保護に移っている。少子高齢化社会でのいい医療とは、シームレスな地域連携医療である。電子カルテを病院から患者の生活圏に出て使うためにみあこネットを役立てたい。ネックは法整備であり、規制緩和は進んでいるが未だ追いつかない。将来的な目標としてはカルテの自己アクセス可能なシステムの構築である。
●「ライブ・アーカイブ構想−子どもの目線でまちを創る」
笠尾 敦司氏(東京工芸大学芸術学部デザイン学科 助教授)
情報デザインとは入ってくる情報を加工して出すこと。「お化けーしょん」やGPS写真のコンテンツはウェブサイトに乗せることで、無意識の情報を集め、広範囲の多くの人が利用できる。ネックは面倒だと思う心であり、先を見抜く力が必要だ。しがらみのない情報を集めるため、スポンサーはコンテンツが見えてから探す方が情報のいい流れが生まれるだろう。

■セッション2「みあこネットを活用した地域活性化事例報告」
「ぼっちゃんとまちづくり」
上杉 志朗氏(松山大学経営学部 助教授)
松山市は経済的に弱い地方都市である。みあこネットの支局8台を観光名所と中央商店街に設置するために営業しているが門前払いとなっていて、仕方なく公的施設に設置している。子育て支援のNPOなどからは要望は出てきている。
「金沢・片町cool」
橋本 亜矢子氏(片町商店街振興組合 事務局長)
片町商店街のイベント「いい片町お店すごろく」は、町全体の各商店がすごろく、カメラ付携帯電話をさいころに見立て、各商店の次世代バーコード付ポスターを携帯カメラで写すものである。今夏には待望のみあこネットが開通し、京都五山の送り火を生中継した。
「みあこ名水」
○辻氏:黒部では名水100選に選ばれた海岸沿いの16箇所の湧水郡を巡る企画を考えている。

■セッション3 「伝統は確信の連続―アナログとデジタルの文化的考察」
基調講演
野村 万之丞氏(総合芸術家・狂言師)
日本は「余国をもって代えがたいもの」を持つべきであり、それは残す文化である。各地域には必ず共通でありながら独自性のあるものが残っている。
「仮面」は見えない神・心と私たちを最初につないだインターフェースである。デジタル時代となり、コンピュータ画面に「仮面」を作り出した。ハイテクノロジーは真実を見抜く目を持つ。自分が分かりすぎてしまうテクノロジーの進歩で、かえって心を狭め匿名から匿顔が求められる時代になった。デジタルも何かに置き換えて、アナログと両方でまちづくりをしていけばいいのではないか。

■パネルディスカッション「安心・安全・元気なまちを創る」
コーディネータ
國領 二郎氏(慶応義塾大学環境情報学部 教授)
パネリスト
野村 万之丞氏(総合芸術家・狂言師)
坪田 知己氏(日本経済新聞社日経デジタルコア事務局代表幹事兼電子メディア局次長/慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科教授(併任))
清水 宏一氏(京都デジタルアーカイブ研究センター 副所長)
岡部 寿男氏(みあこネット事業運営責任者 京都大学教授)
中村 伊知哉氏(スタンフォード日本センター 研究部門所長)
○中村 
ネット世界は使う人間次第で、コンテンツは子どもたちが作るべきであろう。日本が力を発揮しているポップカルチャーは文化環境・社会風俗コミュニティに基づいている。京都にはたくさんの素材があるので、それらをつないで世界に発信していきたい。
○岡部 
ユビキタス社会とはおもてなし社会である。みあこネットの課題はサービス提供のインフラを構築し楽しんで使ってもらうことにある。
○清水 
デジタルアーカイブはコンピュータによる記録保存で、京都の産業を活性化させる最高のテクノロジーである。
○坪田 
プラスサム自律分散ネットワーク型とゼロサムピラミッド型の対立構造の外堀を埋めるためには新しいアーキテクチャーやリーダーシップが必要であろう。
○野村 
かつて日本にはヒエラルキーなく掃除する「レレレのおじさん」がいた。テクノロジーもパブリックなものになれば同体できる。大きくゆっくり遠くを見る心でいれば、デジタルインターネットの世界でも心は通じるだろう。
○国領 
人間の心を問わなければならない日が来た。いよいよ正念場である。

■総括
新川 
もてなしをどうしつらえるか。情報技術もコミュニケーション手段の道具の1つである。自分自身が生きやすく楽しい道具を考え、これからの社会を変えていく手がかりをつかんでいただけたのではないか。

■閉会の辞
竹原 
ユビキタスラジオ・テレビが新しい可能性を示している。技術の進化を一人一人がどう使うのか、幸せに役立つのかを継続して考えてほしい。

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